ドーナツ状に穴が空いた?衝撃のフライパン 〜前編〜に引き続き、後編をご紹介します。
本当の姿を探れ!
お預かりした現物の処理については提供者様より一任頂いているため、まずは外面にびっちりとついたコゲと思われるものを取り除き、本来の姿を発掘することにしました。
フライパン周りにこびりついた汚れはなかなかの強者で、我々メーカーが推奨する「食器用洗剤とスポンジ」で太刀打ちできず。まずは固着した物質を柔らかくするため重曹入りのお風呂に入れました。
そのあと、食器用洗剤を混ぜた「重曹ペースト」を塗りしばらく放置しました。
最後に、汚れを包丁で慎重にこそげ取ると、何とか「元々の形」が確認できるレベルまで発掘完了。
※今回は、調査のため包丁で汚れを落としました。とても危険ですので、ご家庭ではやらないようお願いします。
ついに姿を表した
蓄積された焦げをすべてを取り除くことはできなかったが、この製品がどのようなものであったのかが確認できるレベルとなった。
ちなみにキッチンペーパーに乗っているのは本製品から削り取った焦げ。
この製品が、底面にステンレス板を打ち込んだ「IH対応のフライパン」であることも判明した。
破断した部分の断面調査
ようやく、穴の部分の破断した断面の調査ができる状態となった。破断したのがごく最近で有れば、断面は素材であるアルミニウム合金の銀色となっているはずである。
電子拡大鏡を使い全周調査。
結果、ほぼ直近の破断(穴が開いたとき)と思われるが、
一か所のみ他と異なり、金属の断面に黒い焦げが入り込んでいる部分が確認された。これは破断後に使い続けられていた証拠である。
見えてきた真相
断面状態から、最終的に穴として貫通する前段階から一部にひび割れが発生し、油が染み込んでいたはずである。
であるならば、外側に染み出し使用に耐えられる状態ではなかったはず……
そう、そこが今回の奇跡なのです。
外側全体に固着していた油汚れと判断できる固形物が、フライパンの外側をコールタール(=石炭を高温乾留する際に生成される油状物質)のように固め補強していたのだ。そのため、外側に漏れずに使い続けられていたのである。
おそらく、穴が開く前、内面にヒビ状の痕があったはず。
使用者と直接連絡を取っていたSirabee(しらべぇ)様によると、記憶があいまいな部分があるが、ヒビがあった気がすると回答も頂いていることからほぼ間違いない。
その奇跡的状態で使い続けておられたのです。
最後に調理された際、加熱終了直後にステンレスの調理台に置いた際、熱膨張と収縮が激しすぎて限界突破!で穴が開いてしまった。が真相です。
コンロ上に出しっぱが原因?
前回説明のように、内面は非常にきれいにお手入れをされ使用いただいていることから、お手入れが不十分で有ったとは言い難い。
おそらく、使用者様は洗浄後、ほとんどコンロの上に出したままにされていたと推測できます。
調理がお好きで頻度が高い方ではよく見られる光景です。その状況化で隣接するコンロで揚げ物や別の炒め鍋などで、油煙がフライバンの外面に付着し、隣のコンロの熱気があたる状況だったのでしょう。わざわざ外面だけを洗うといったことはしないため、徐々にそれらの油煙が蓄積していき、現品のような強固な汚れの層を形成したのです。狙ってやってもなかなかここまでの条件がそろうことはなく、改めて超レアケースです。
防止するには…めんどうですがお手入れ後、都度、コンロ下の収納などに入れ、他の調理の油煙や油飛びが付かないようにしていただくと良いかと思います。
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